リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

俺たちは、言葉を発し、思いを伝えることが出来る存在だ。
ある一定の感情を持って、我々は誰かに何かを伝えようとする。

しかし思いを伝えられないことがある。
そういうとき我々はどうするのだろうか?
それを押し殺し、無かったことにして、知らんぷりして生き続けるのか。
それともそれを声高に叫ぶのか。解決は出来ない。それでも悲鳴をあげ、絶叫するのか。


この映画に出てくる中学生の若者達は、普通の子供達だ。
親に反感を抱き、万引きをし、恋をし、不器用ながらにも生きている。
しかし彼らは自分たちがそんな“普通”な子供であることも知っている。
そしてなんとかそれから逃れようともがく。
自分らの抱いてきた希望や、夢が、思いが泡に消えてしまうことを何よりも恐れるから。
内的世界と外的世界とのズレ。
結果起きたのは、数々の亀裂。レイプ、自殺という救いようがない結果だった。

自分は違う!自分はたった一人の人間だ!
彼らはこの映画の中で必死に叫んでいる。
今という瞬間の持続に生きる人間として、声高に。

この映画の、映像は綺麗だ。音楽も素晴らしい。クールだ。これはこの映画の外的世界と言えるだろう。
かたや我々がもはや慣れてきてしまっている、少年犯罪、自殺などの痛み。見ていられない、目をふさぎたい展開、出来事。これがこの映画の内的世界。

バランスがとれない子供達。傾いて、崩れていく。
そして彼らは叫ぶ。ただただ、綺麗な土地で、絶叫する。
内的世界と、外的世界の交錯。
そこにカタルシスはない。


何故俺らは叫ぶのだろう。
メタルもそうだ。泣くこともそうだ。godspeedyouの音楽もそうだ。怒ることもそうだ。鬱になることも。そうだ。
みんな叫んで、悲鳴を上げている。声になる物も、ならない物も。

叫ぶ“べき”なのだろうか。