物を壊してしまった。
母親がその学生時代に、最も苦労した時期に使っていた、お湯沸かし器。
一人暮しを始めたときに母親に貰った、俺にとっても大切な物。コンセントを入れるだけでお湯を沸かせて、コンロがひとつしかない我が家の調理で大活躍してくれたのに。
うっかりお湯を沸かしたままうとうとしてしまった。お湯が蒸発して無くなり、空焚きの状態に。自動停止なんて便利な機能はなく、結果俺の不注意で断線。


物を大切に出来なかった自分を心から恥じる。
大量消費社会。同じような機械は2000円も出せば買えるだろう。しかしそれは量の問題。質の面から見たら? 決して同じものは戻らず、俺の物を大事にしないという軽薄な人間性が残っただけ。


壊れたその銀色の機械を茫然として眺める。
コワレチャッタ。
これは俺の過ち。そして罪とさえ言えると思う。
物を大切に出来ない人間が人を大切に出来るのか?
不注意で簡単に失ってしまえる大切な物が、いったいどれだけあるだろう?


心から恥じる。
明日電気屋に行って直せるか聞いてみよう。そして直せなかったらずっとそれを持っていよう。


人間性の問題。